「めかくしりとりったい 〜目隠尻取立体〜」とは、
目を閉じて紙を造形する、しりとりのような遊びです。
やってみると、何気ない色や形がいろんなものに見えてきたり、
自分や他人の物の捉え方が見えてきたりします。
最近考案して3回ほど取手の「あーと屋 図工室」で実施しました。
実施してみたら結構楽しくできたので、アーカイブにしておきます。
参加者の数は3人以上から。どれだけ大人数でできるかはまだ未知数です。
対象は「しりとり」ができる人なら、子供から大人まで。
<準備>
・折り紙:1人につき10枚以上
(色や大きさなど多様なものが良い。両面に色がついているものならなお良い)
・セロテープ、ホチキス:人数分
・メモ用紙と鉛筆:人数分
①
まず、折り紙の中から好きなものを1枚選びます。
②
折り紙を両手で持ち、目を閉じます。
折り紙の感触を手のひらで感じながら、優しく潰してゆきます。
今どんな形なのか、想像してみながらやると楽しいと思います。
「もういいかな」と思ったところで目を開けます。
*目を開けたら折り紙の形は変えられません!
③
できた形をいろいろな方向からよく見てみます。
じ〜っと見ながら、この形に似ているもの、
この形からイメージするものを想像してみます。
何かに見えてきたら、その名前を周りの人に見られないよう、
こっそりメモ用紙に書きます。
*折り紙を回したり、ひっくり返したりすると、また違った形が見えてきます。
たくさんのものに見えてきた人は、たくさんメモに書き出してください。
④
それぞれの作った形が、何に見えたのかクイズ形式で当てあいます。
この形はなんだろう・・? 「花?」「トリ?」「雲?」
⑤
クイズがひと段落したら、
それぞれさきほどメモに書いた名前(見えたイメージ)を一つ選び、
その言葉と「しりとり」になるように、「次の何か」の名前を1つ書きます。
(例:「やま」ー「まりも」)
*参加者は、ここで初めて今日の制作で
「しりとり」を行うことを知る方が良いと思います。
*しりとりのルールはユルくて大丈夫。
・言葉の最後が「ん」になってしまったら、1文字前からつなげてOK。
(じしんーしんか げんかんーかんづめ)
・濁点、破裂音は、無しにしたり変換してOK。
(たんぼーほうき たんぼーポンプ)
・作った形を見て、イメージと違うものに見えたら、その名前から続けてもOK。
(「牛」を作ったつもりが、
「りんご」にしか見えないものができた=「りんご」から続けてOK)
上にある実際の「しりとりメモ」もそのような感じで、
いろいろ「しりとり」が飛んでいますが問題ありません。
とにかく楽しく続けて作ってゆくことを大事にしてください。
⑥
「しりとり」で「次の何か」が決まったら、
先ほどと同じ方法で、その形作ってみます。
色や大きさを考えて、好きな折り紙を1枚選び、
「次の何か」になるよう、目を閉じて形を作ります。
(「やま」ー「まりも」なら、次は「まりも」を作ってみる)
もちろん、これまでと同じく目を開けたら形は変えられません。
やっていると、だんだん祈祷師のような動きになってきます↑
形のないモチーフでも、手を動かしていれば、
「その形にしか見えないもの」が案外できてしまったりします。
むしろ、形のないものをどうやって形として伝えるか、
いろんな工夫を楽しんでください。
これまでも、『漢字検定』『温度』『ロシア』『勝ち』などの
難モチーフの作品がありましたが、いろんな方法で見事解決。
国旗をイメージした『ロシア』
漢字の「本」をという字を表した『漢字検定』
そう言われれば、そう見えてくる気がする『温度』
人が飛び上がって喜んでいる様子が浮き上が『勝ち』
メッキは「メダル」のイメージかも。
続けていくうちに手も慣れてくるし、
頭や視点も柔らかくなってゆくので、
こんな風になんでも一枚の紙で表せるようになっていきます。
(改めてやったことを振り返ると、
何か新しい「言葉」を作っているような気もしますね。。)
どう見えるかなんて本人次第、人それぞれなので、
何にでも見えてしまう目が仕上がっていくことを楽しんでください。
⑥
「次の何か」ができたら、また「しりとり」で
次に作るものをメモに書き、この繰り返しで
紙の立体をいくつも作っていきます。
夢中で作っていると、
どれが作品で、どれが素材か、
どれが自分ので、どれが他人のか不明になる。。
そもそも何を作ったのか忘れる。。。
作ったものを見失う。。。
というようなことがよく起こってくるので(笑)、
・作業場を整理して作る
・何を作ったかメモに書いておく
ということをしっかりやっておきましょう。
⑦
ある程度の数ができたら、作った立体を並べて、
どんな「しりとり」になったか見せ合います。
それではここから、できた「めかくしりとりったい」の
「しりとり」の一部をお見せしましょう。
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「はっぱにかくれたかめれおん(葉っぱに隠れたカメレオン)」↑
「おんど(温度)」↑
「どろ(泥)」↑
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「かんけん(漢検:「本の字」)」から変化して「かんじ(漢字)」↑
「じしん(地震:揺れている家)」↑
「じんち(陣地:地形のジオラマ)」↑
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「まんもす(マンモス)」↑
「すずめ(スズメ)」↑
「めじろ(メジロ)」↑
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「ほんたて(本立て)」↑
「てとりす(テトリス)」↑
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「こーんすーぷ(コーンスープ)」↑
「ふきん(布巾)」↑
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「かーと(カート:マリオカート)」↑
「といざらす(トイざらす:企業ロゴ?)」↑
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最後はある人の「しりとり」を最初から最後までお見せします。↓
【始まり】「やま(山)」↑
「まめ(豆)」↑
「めし(飯)」↑
「しずく(雫)」↑
「くり(栗)」↑
「りんご(林檎)」↑
「ごま(胡麻)」↑
「ます()」↑
「すし(寿司)」↑
「じらい(地雷)」↑
「いか(烏賊)」↑
「かめのこうら(亀の甲羅)」↑
「らくだのこぶ(駱駝の瘤)」↑
「ぶどう(葡萄)」↑
「うめ(梅)」↑【完】
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すごいですね。
なんでも作れるようになってしまいました。
あと、作品を見ているとこちらの目も、
なんにでも見える目になってきます。
写真で伝わりやすい作品をピックアップしましたが、
実際には立体なので、360度で楽しめる作品も多いです。
今度は映像とかでアーカイブした方が良い気がしました。。。
⑧
「しりとり」の紹介がひと段落したら、
最後にホチキスやテープを使って、
作った全ての立体を一つの形に合体させます。
合体の方法はそれぞれに任せます。
物語のように、それぞれのモチーフを関連させても良いし、
ジオラマのように立体の世界を作っても楽しいと思います。
できた作品を、再び色と形に還元して、
全く違うものとして捉え直したり、
単なるパーツと考えて、新たな作品を組み上げていくのもアリです。
⑨
合体させた作品をそれぞれ見せ合って、終了です。
さまざまなモチーフが合体してできた「飛行機」↑
お話のモチーフを指差しながら、
状況に応じていろんな物語が話せる絵本の機能を持った作品↑
ハワイ島↑
・ペンギン
・メジロ
・スズメ
・ジュゴン
・銀を頭につけたマンモス(おなかの中には山が飲み込まれている)
↑というような構造の作品
畑を荒らしているカラスの像↑
日本の形↑(北海道と本州。黄緑が茨城県)
巨大アスレチック↑
ほぼ直線で構成された作品↑
全ての作品が包まれてキャンディに↑
全ての作品が丸まって、巨大バーガーに。(ポテトはおまけ)↑
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工程はここまで。
実施時間はだいたい1時間ちょっとくらい。
作り方にいろいろ工夫のしがいがあるので、
大勢でやるほどいろんな作り方の発見ができて楽しいと思います。
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「めかくしりとりったい」は、
もともと川村記念美術館にある「フランク・ステラ」の
抽象的な立体レリーフを鑑賞するきっかけとして考えました。
このような作品を自分で作ってみたり、
見て楽しんだりする感覚を気軽に体験できないかなと、
ある対象を再現しようとする「具象」のアプローチに対して、
再現性から距離を置き、作品それ自体の構造によって成り立つ
「抽象」の概念で遊ぶ方法を考えたことで、
目を瞑る制作法や、「しりとり縛り」が主な要素になっています。
大人向けにやるなら、
そこらあたりの紹介を最後に添えて閉め括るプログラムになるかな〜と思います。
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・・ということを横においても、
単純に楽しめる遊びだと思うので、
興味ある方はぜひ実際にやってみてください〜