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ホームページをリニューアルしました! https://www.yusatoweb.com バラエティパックのようなこれまでの活動を一望できるページです。 最近埋もれていた過去のあの活動も多数紹介しています。 いろいろなところをたくさんクリックして楽しんで...

2012年2月29日水曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その5



2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。

参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

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<その5>
ワークショップの中で子供たちが興味を持ったのは、ホットボンドという接着剤でウロコをドラゴンに貼付ける作業だった。このホットボンド(別名ホットメルト、グルーガンとも)と言う物は、熱で溶け、冷えると固まる性質を持った軽工作用の接着剤である。道具自体は、銃の様な器具にスティック状のボンドを装填しトリガーを引くと、電気の力でボンドが溶け出すという単純な物だが、溶け出すボンドは高温でやけどをしやすく、トリガーを自在に引くには以外と力が必要だったり、しかもボンドの硬化具合は器具の温まり具合や外気温によって変化するという、少々子供には扱いにくそうな代物だった。



なので、最初は彼等に扱わせる事にためらいもあったが、大人がいっしょに付き添って危険因子を軽減する形で、一度ホットボンドを託してみると、多くの子供たちがその作業に魅了され、普段の作業より遥かに長い時間作業は継続された。何より、他の作業と異なるのは、彼等自身が作業を楽しんでいるという事だった。こなさなくてはならないタスクではなく、仕事の中で自分が道具を攻略したり、状況をコントロールしてゆくような、プログレスがある事を単純に楽しんでいた。毎日が成長の中である彼等は、そのようなプログレスがある作業に特に惹かれていた。その後の日々のワークショップでも、熱線で発泡スチロールを焼き切るスチロールカッターや、電動ミシンでの縫い物の作業の中で、彼等は同じ様な反応を見せた。



未知が既知になること、出来なかった作業が出来るようになる事が、彼等にとって一番価値があることのようだった。特に「あぶないから」「子供にはまだ早いから」といえばいう程、彼等はやる気になり、熱心に仕事に打ち込んだ。

つづく

2012年2月26日日曜日

「いちまいばなしのうらばなし」その2

その2「逆接のクロスカウンター」



さて、今回で2回目となる「いちまいばなしのうらばなし」。お話の解説とともに、その傾向に名前を付け、「いちまいばなし」の慣用句を作って、解説をしやすくしてゆこうと思っている。今回紹介するのも前回に引き続き、釜石で作られた、磯の香り漂う「いちまいばなし」をまずは一読。。。

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いちまいばなし No.003
岩手県大船渡
2011年5月29日

「釜石の海」

ある大きな船に人がたくさん乗っていました。
そしてその人たちはつりをしていました。
ある一人の男が怪我をしたカニをつり上げ、手当をしてあげました。
するとかには「ありがとう」と言いました。
つり上げたとなりの人が、カニに一緒に住まないかと訪ねました。
その人は、釜石のアパートや集合住宅のあるところに住んでいました。
カニは海の中のきれいな海藻の家に住んでいたので、その話を断ろうとしました。
でも、タコに墨で家を汚されてしまった事を思い出し、やっぱり一緒に住む事にしました。
その時、別の人がサメを釣り上げました。その隣の人はマンボウを釣り上げました。
サメがカニを食べようとしたので、マンボウがヒレでサメをこちょこちょとこそぐって、
カニを逃がしました。
そしてカニはその人と釜石で仲良く暮らしました。
おしまい

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前回の「サメつり(仮)」の変な違和感を手がかりに始まった「いちまいばなし」の歴史。上記の話も前回紹介した話と同じく、釜石で開催した最初の「いちまいばなし」の中で生まれた話である。「サメつり(仮)」と同じメンバーで作ったこの作品にもまたサメが登場しているが、「いちまいばなし」の特徴として、同じ要素が次につくる話に登場してくるという事もがよくあり、だんだんとそのキャラクターが掘り下げられてゆく傾向がある。また、同じメンバーで何回かお話をつくった後の作品で、制作を重ねるうちにだんだんお話をもっと面白くしようという欲が参加者の中に現れて来たのが印象的だった。しかし、「いちまいばなし」の構造上、なかなか「こんな話にしたい!」と思った様にはいかない。

この時も話をつくる前に、1人「泣かせる話にしようぜ!」と意気込んでいるメンバーがいて、その作為の結果がサメに食べられそうになったカニをマンボウが救うという流れになった。作った本人にしてみれば、ここがクライマックスで泣かせるシーンらしいが、読者として読むと中々そうは思えない。複数の思考をリレーしながら話を作っているので、参加者の1人が話をこうしたいという考えがあっても、全体の意識が統一されると言う事はまず無く、どうしてもよけいな描写や、流れには適さない部分が入ってしまう。だから話の印象としては何がやりたかったのかよく分からない印象になってしまいがちだ。逆に言えば、そんな曖昧な部分がそのままお話になってしまうと言うのが「いちまいばなし」の特徴であり、魅力なのだ。

思考が交錯する事で話の流れがカオティックになってゆくと言うのは、「いちまいばなし」の基本的な流れだが、時にその思考同士がはっきりと対立関係に陥ってしまう事もある。そして、曖昧な部分がそのままお話になってしまうように、この思考の対立もそのままお話になってしまうのも「いちまいばなし」の面白さである。この「釜石の海」で、そんな参加者同士の思考のせめぎ合いが一番良く現れている部分が、「カニをつり上げたとなりの人(カニを釣り上げた人ではない!!)」と「カニ」が一緒に暮らすかどうかという以下の場面だ。

(原文)
つり上げたとなりの人が、カニに一緒に住まないかと訪ねました。
その人は、釜石のアパートや集合住宅のあるところに住んでいました。
カニは海の中のきれいな海藻の家に住んでいたので、その話を断ろうとしました。
でも、タコに墨で家を汚されてしまった事を思い出し、やっぱり一緒に住む事にしました。

最初の流れでは、人間とカニが一緒に住んでハッピーエンドという場面が目に浮かぶ。しかし、次のバトンを貰った人はその流れに反し、いきなり自宅が綺麗だったという設定を持って来て、カニとは暮らさせない様な流れに持って行こうとする。しかし、またここで「一緒に暮らさせたい派」がタコの墨で汚されたという設定を無理矢理出してくる。。。まるで「いちまいばなし」という話のリングで作者同士の思考の対決が行われているようだ。さながらカウンターパンチの応酬が繰り広げられていると言ったところか。。。普通のお話ではカットされてしまう様な、話が行ったり来たりしてしまう様な部分も「いちまいばなし」では律儀に残してしまうので、このような思考の戦いの跡が話の中に見て取れる。

話の流れを裏切るというのは、展開の飛躍に繋がるので物語には付き物だが、こんなクロスカウンターの様な逆接の多用をしたりはしない。宝を持って帰る、困っている人を助けるというような、物語の至極当然な流れを裏切るには、普通ならばなぜ敢えてそうしたのかという腑に落ちる理由が必要だが、「いちまいばなし」にはそんな物が全く必要とされない。というか、適当に理由を付けて現場の間を埋めればそれでお話になってしまうし、もっと言えばその事自体が面白さにも繋がっていく。逆接の展開をライトな感覚で使い回せる「いちまいばなし」の特徴が、このような流れを生んでいるとも言える。但し、読者は後でその物語の行間を想像するのに、非常に苦労する事になるのだが。。。
このような思考の対立が生む逆説の応酬を「いちまいばなし」の中では「逆接のクロスカウンター」と名付ける事にしよう。

2012年2月24日金曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その4


2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。

参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

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<前回までのあらすじ>
「WAKABADAI SKY DRAGON」の制作を始めた私の元に、子供たちがだんだんと集まり、プロジェクトに関係する人たちが増えていった…


<意外に苦戦したドラゴンのウロコ。広範になるにつれ、そのデザインはだんだん簡素化されてゆく>

<その4>
動き出したプロジェクトの最初の訪問者である彼等はその日、試作品のドラゴンをひとしきり振り回して遊び、「また明日も友達を連れてくる」と言い残して帰って行った。そして本当に次の日は友達がやって来た。同学年である3年生の友達と、さらに彼等の6年生の兄とその友達5~6人がやって来た。だんだんとワークショップが行える対象は集まって来たのだが、僕の方はまだまだ準備不足で、彼等と何かを進められる状況ではなかった。
とりあえず、週末に予定している最初の公開ワークショップに向けて、彼等に準備をしてもらおうと簡単な工作の作業を頼んでみた。ドラゴンのウロコの形をビニールシートに型紙で転写し、線の通りにハサミで切る。子供でもできる簡単な作業だ。と、僕は思っていた。しかしそこで僕は初めて、子供の持つ集中力、作業力というものに直面した。

まず、ハサミでの作業を苦もなく出来る子は子供では中々いない。いや、ハサミを上手く使える子はいくらでもいるだろう。しかし、それは自分の作りたい物を作るときであって、大人の様にこなさなければならない作業を、淡々と苦もなく繰り返してゆけるようなハサミの使い手はなかなかいない。また、彼等の集中力は1時間、いや30分持てば良い方で、同じ作業を5分もすればだいたいの子は別の事をやりたがった。
それまで僕は、子供たちが持つ作業量を、大人のそれとと同じ地平で考えていた。作業内容を小学校高学年なら大人の5分の1、低学年なら10分の1などと、それぞれ単純にスケールダウンさせれば、子供たちでも進められるだろうと考えていたが、それは全く見当違いだった。つまらない作業は遠慮なくはじかれる。目の前にある事をやるかどうかは、それが魅力的かどうか、それだけだ。まだ着地点も概要も見えない僕のワークショップは、彼等にとってまだまだつまらない物だったと思う。大人の様にその場に立ち会ってしまった義理だけで作業を続けてもらえる程、子供の世界は甘くない。一度席に着いても、いつでも作業を放棄する事ができる。作業に人をもてなすような魅力がないと立ち行かない言う事を、素直な彼等は教えてくれた。




<少し簡略化されたドラゴンのウロコ。>


そんな日が1週間程続き、やがて第一回公開ワークショップの日がやって来た。この頃はまだ、若葉台の中心街で空の芸術祭のために常時解放しているスペースは無く、我々作家は、平日は西中で活動を行い、週末の土日に団地中央に位置する広場で、公開ワークショップを仮設テントを建てて行うという形をとっていた。8月から、既に活動していた作家のワークショップが大きく展開しており、僕はそのテントの隅でドラゴン作りのワークショップを開催した。試作品を作ってみてドラゴンが子供には大きすぎる事が分かったので、サイズを一回り小さくしたドラゴンの完成を目標に、平日は西中で胴体と頭を作り、土日の公開ワークショップでウロコの切り貼りをして完成させようという算段だったが、前述した様に、ハサミを使った作業や、型紙でウロコの形をトレースする作業は子供にはまだ退屈で、結局他の作家のスタッフの力を借りて、必要なウロコをこしらえることになった。

続く

2012年2月23日木曜日

3月25日、26日「とりでえきまえアート縁日」参加

直近になりましたが、活動の紹介です。


今週末に茨城県取手市で行われる「とりでえきまえアート縁日」のアート屋台で「いちまいばなし」を行います。


時間は10時から16時で、「いちまいばなし」の実演を行います。
参加者には「いちまいえほん」を1枚差し上げます。
また、以前作った絵本とその原画の販売も行いたいと思っています。


「いちまいばなし」の生本番が見られる貴重な機会。
他にも周辺でいろんなイベントがあるそうなのでお近くの方はぜひ。。




「とりでえきまえアート縁日」:http://www.toride-ap.gr.jp/news/?p=326




2012年2月22日水曜日

「いちまいばなしのうらばなし」その1


その1「サメおにぎりの感覚」

今回から始まる「いちまいばなしのうらばなし」。この連載では、「いちまいばなし」を「読む」事に重点を置き、毎回物語を紹介しながら、それを読み解いて来る中で現れてくる、話の構造や特徴に名前を付けてゆき、「いちまいばなし」の分析と研究を進めてゆきたい。今回紹介するのはこちら…

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いちまいばなし No.001
岩手県大船渡
2011年5月29日


「サメつり(仮)」

船がありました。
船には人が乗っていました。
その人はつりをしていました。
その餌はミミズでした。
空にはカモメが飛んでいて、虫を捕っていました。
船には大漁旗がはためいていました。
餌にサメがかかりました。
サメはつられて丸焼きにされました。
そしておいしいおにぎりになりました。
おしまい。
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<解説>
岩手県大船渡市で行った、いちばん最初の「いちまいばなし」の中で、いちばん最初にできた短いお話。この話ができた事で、その後の「いちまいばなし」の方向性が決まったと言っても過言ではないという、歴史的な1作である。
タイトルの(仮)というのは、この頃はまだタイトルを付けようと言う考えもまだ無く、「サメつり」というのは私が後でつけたタイトである。(もちろん「いちまいばなし」という活動の名前もまだ存在していなかった。。。)その場にいる人に先の展開を問いかけながら、一枚の紙に絵を書き、物語をつくってゆくという、「いちまいばなし」全体の流れを思いつき、震災復興活動の「やっぺし祭り」というイベントの中で始めて行う事になった。大船渡という地名から、最初にお話に出て来るものは「船」に決めた。
参加したのは、小学3年生男子2人と、その弟1人の3人だった。始めてみると、こちらの思惑とは裏腹に、「船には人が乗っている」「釣りをしている」「エサはミミズだった」…と至極まっとうな話しか出てこない。話を追っていくとものすごく普通の展開である。サメを釣るというのは少し変だが、このくらいの物語はいくらでもある。むしろ現実でも起こりうるレベルの状況だ。う~ん、これは困ったぞと思いながらも、ダラダラ続けても仕方がないので、「釣ったサメをどうしたのかな?」と話のオチを3年生の1人にふる。すると、「丸焼きにした」との答え。他の2人は少しウケていたが、私は内心やっぱり最後まで普通の話になってしまったか思っていた。この「いちまいばなし」がもっと面白くなるだろうと感じていたのは、机上の空論だったのかと、自分の企画自体に失望しかける程だった。いや、でもまだ弟君のターンが残っている。駄目もとで一応話を振って見た。「じゃあ、どうやって食べたのかな?」とそこで出て来たのは「おにぎり!」

え!?どういう事!?

ご飯はどこから出て来たの?
まるごとなの?切り身なの?ほぐし身なの?
それは果たしておいしいの?

という様なツッコミというか、疑問が一瞬にして頭の中にどんどん沸き上がって来る。と同時に「これだ!!」と感じた。この脳味噌がスパークする様な、言葉の出会い、思考の衝突こそが私が「いちまいばなし」に求めていたものなのだと。他者と他者の思考を飛び越えて行くうちに、個人では絶対に発想できないおかしな世界へたどり着く経験と、そこで感じる妙な違和感こそが「いちまいばなし」の真骨頂なのだ!!
でも、そんな興奮に包まれた物語作りの現場から、距離も時間も離れて今改めてこの話を文章として読んでみると、不思議とこの「おにぎり」というチョイスこそがこれ以上ない解答の様にも思えて来る。いろんな食べ物がある中で、カレーでもなく、ハンバーグでもなく、「おにぎり」というのは、サメを食べるのに意外としっくりくるような気もして来る。刺身よりも寿司よりも、むしろ「おにぎり」の方がサメの味を美味しく味わえるのではないかという妙なリアリティーがある。設定としてはぶっ飛んでいながらも、発想の経験がない事象だからこそ感じる「サメおにぎり」のリアリティー。この妙な感覚が手がかりとなり、呼び水となり、後の「いちまいばなし」の絶妙なバランス感覚が共有されてゆく。この「いちまいばなし」の面白さの根源であり、価値基準ともいえる妙な違和感を、ここでは「サメおにぎりの感覚」と名付けたい。

2012年2月21日火曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その3


2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。

参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

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<前回までのあらすじ>
芸術祭開催1ヶ月前、再び若葉台に入った私は、空の芸術祭でのプロジェクトとして、「WAKABADAI SKY DRAGON」を立ち上げた。


<その3>
おおまかな構想はあったのだが、そのころはプロジェクトの具体的な着地点はまだ見えないまま、まず始めに、小さな制作物から活動を始め、仲間を集めたいと思い、1人が持って振り回して遊ぶような小さなドラゴンを作り始めた。鯉のぼりのような筒状の胴体を持ったドラゴンに、虫取り網のような構造のフレームをつけ、棒を振り回すと胴体に空気が入り、龍が舞っている様に見えると言う代物だ。制作を初めて2、3日たち、試作品が出来始めた頃、僕のところに初めて訪問者が現れた。その頃制作場所として使っていた前述した西中の立地は、団地の中心街からは大きく外れており、なかなかふらりと人が訪れる場所ではなく、基本的には孤独な作業が続いていた。そんなさなか、突然2人の小学生がやって来た。彼等は、他の作家のワークショップを目的に西中を訪れ、ついでにこちらのスペースにも来てくれたようだった。


全長3m程の小ドラゴン

「なんだこれ!かっこいい!」第一声はそんな感じだったと思う。小学3年生という2人は、試作品として作っていたドラゴンを一目見てかなり引き込まれたようだった。最初に出会った彼等は、今思うと、直感的にプロジェクトの面白さや可能性を嗅ぎ取ったのではないかと思う。その後もいろんな子供たちと出会ったが、プロジェクトへの参加の仕方はいろいろで、友達がそこに集まるから来る様になったり、自分と遊んでくれる大人がいるから来たりと、だいたいは場の居心地の良さからワークショップスペースに入り浸り、その後制作を続ける中で、出来てゆくものや関係性に重要性がシフトしてゆくような、場から物へ興味が移ってゆく事が多く見受けられた。だが、まだ場が何も出来ていなかったその時、純粋にドラゴンを見て、こちらへ入って来てくれた彼等はかなり特異な存在だと後々になって気付いた。


試作品4.5mの大ドラゴン(左)と4mの中ドラゴン(右)

さっそく前日に出来たばかりの、試作品のドラゴンを彼等に披露する。白いドラゴンが空を舞う姿を見て、彼等は興奮し、自分たちもやってみたいと言い出した。図らずも、最初に出来たその試作品のドラゴンは子供が持って遊ぶにはかなり大きく重く、発泡スチロール製の頭部は、彼等が遊ぶ度に地面にぶつけられて何度も壊れた。自分たちではどうしても上手く扱う事ができないので、ドラゴンは一周して僕の手元に帰って来た。そこで、ここぞとばかりに再びドラゴンを舞わせると彼等は感嘆し、僕は「ドラゴンを上手く扱えるもの」として少し尊敬される様になった。その後も彼等といっしょにワークショップを行ってゆく事になるのだが、その中でも彼らが扱いづらい道具を使いこなしたり、絵をうまくかけたりといろいろな場面で、まだ自分の体を上手く扱えない子供と、物を扱う事に慣れた大人の境を彼等なりに強く感じたのだと思う。いつからか僕は彼等から「師匠」と呼ばれる様になった。この呼び方は、その後集まって来た子供たちにも広まり、会期が始まる頃には、その親御さんたちからも師匠と呼ばれる様になっていた。おそらくこの呼び方の背後には、先生でもなく友達でもない僕と彼等の関係性のなかで、僕を呼ぶ為の何か新たなポジション名が必要だったからだと思う。佐藤さんと名字で呼ぶにはよそよそしい感じがするし、下の名前だと馴れ馴れしすぎる。少しの尊敬と気恥ずかしさを込めて、「師匠」という名が生まれたのだろう。後にこの通名は、ワークショップの進行において意外な効果をもたらす事となる。

つづく

2012年2月18日土曜日

「いちまいばなしのうらばなし」予告





昨夜は「ゆう こと はなし」の第2回が開催され、「いちまいばなし」を中心にトークをさせてもらいました。一枚の紙に絵を描きながら、出会った人達と即興で物語をつくってゆく活動「いちまいばなし」。これまでは、お話をただつくるだけでなく、できたお話を布で再構成し「えほんのはた」にしたり、新たに絵をつけて一枚の紙でできた絵本「いちまいえほん」を発行したりと、派生した活動も同時に行って来ました。



「えほんのはた」006 恐竜のたき火





「いちまいえほん」002 雲の王国に行くうさぎたち(表)

昨夜はこれまでと少し趣向を変え、できたお話を物語として読んだ時、どんなことが見えて来るのかを語る、「いちまいがたり」という新たな試みを行いました。いくつかの「いちまいばなし」を例に、お話のどんなところが面白いのか、物語からどんな事が読み取れるのか、このお話が生まれた現場はどんなだったのか等を、友人の漫画家をゲストに、解説と実況を織り交ぜながら1時間ほど話させて頂きました。突拍子も無い展開が続く「いちまいばなし」に、会場は時折大きな笑い声につつまれつつ、楽しいトークショーとなりました。
しかし!まだまだ僕としては話足りない部分がたくさんあるんです!!「いちまいばなし」のどこが面白いのか、何が魅力なのかをつたえる為に、次回の更新から「いちまいばなし」を1話づつ例にとり、話しきれなかった裏話を「いちまいばなしのうらばなし」としてここで紹介してゆこうと思います。「つくる」側ではなく「よむ」側から楽しむ「いちまいばなし」が一体どんな物なのか…乞うご期待。。





2012年2月16日木曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その2





2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。


空の芸術祭HP: http://www.sky-wakabadai.com/index.html
参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

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<前回までのあらすじ>
空の芸術祭の封切りイベントとして、初めてのワークショップを行う事となった私。
だが、手応えの無いまま1ヶ月が過ぎる事となった…



WAKABADAI SKY DRAGON 第一弾 フライヤー

<その2>

1ヶ月活動して僕の胸に残ったものは、場当たり的なものになってしまったなという感触だった。もちろんワークショップの中で何も生まれなかった訳ではない。ワークショップを開催する中で集まって来てくれた実行委員の方や毎週参加してくれるようになった小学生など、活動に対する目に見える反応は確かにあった。しかし残念ながら、そのときの僕はまだそのような見えて来た糸口をたぐり寄せる術を持っていなかった。協力してくれそうな人はいる。ただ、その人に今何を協力してもらうべきなのか、何を頼むべきなのかが分からなかった。初の自分開催のワークショップだった事もあり、全ての事を自分が行って責任を果たさなければならないという気持ちがどこかにあって、誰にも何も頼めない状況に陥ってしまっていた。1週間に1度しか来れず、その日に何らかの結果を出さなければならないという焦りもあった様に思う。だが、関係性を築く事が出来れば、残りの6日で現場の協力者にやってもらえる事はいくらでもあっただろう。また、とにかくワークショップの現場を回す事だけにとらわれていたが、よくよく考えれば、たかだか隔週のワークショップで制作できるもののクオリティなど知れていて、その出来不出来に拘泥するよりも、その活動を糸口に今後に繋がる関係を築いてゆく事を見据え、現場を回す事は他の人に任せて、自分が活動をさらに広げ、つなげてゆく為に動けたかもしれないと今になって思う。もちろんこれは終わってから感じられる事で、この後開催されるWAKABADAI SKY DRAGONのワークショップでもこの状態はしばらく続く事となる。

不完全燃焼な感覚のまま、若葉台を後にした僕はその後すぐ新潟で行っているプロジェクトに入り、次に若葉台を訪れたのは、8月23日、気付けば本番までちょうど一ヶ月前の頃だった。
その頃には、レジデンス施設も整い、他の作家も若葉台でプロジェクトを始動させ始めていた。その日から滞在を始め、初期の制作場所となった若葉台旧日中学校(西中)の工作室に作業場を構えたが、その状況に僕は正直かなりの焦りを感じていた。計画としては、7月に行ったワークショップの延長を行うのではなく、新たなプロジェクトを立ち上げたいと言う事が念頭にあった。
この時ぼんやりと設定していたプロジェクトの目的を今改めて書き表すと、「出来るだけ多くの人との共同制作を行う」ということ「大きな場の転換を起こす」という2点であった。アートプロジェクトという形で私が地域に介入し、何かしらの作用を起こす事で、土地とそこに住む人々のが持ちうるポテンシャルを活動の中で再発見し、出来るだけ多くの人と関係性を作り、土地と人の潜在能力を引き出しながら、誰も見た事の無い光景を作り上げるというものが狙いだった。


ブータン王国旗

そこで私が今回のアートプロジェクトを行う上でベースにしたのは、「祭りをつくる」というイメージだった。これは、先に出た新潟で行っているプロジェクトにも共通するテーマで、何かを作り、それを発表するという流れの中で、人が集い、何か大きな場の転換を起こし、最終的な発表の場では、制作された物だけではなく、築かれた人の関係性が大きな盛り上がりを作ってゆく状況を構築してゆきたいと考えた。
では、この若葉台で何を作ってゆくのか。祭りでいえば神輿のような、活動と発表の依り代となるような物を何に設定するのかを考えていたところ、長崎くんち等の祭りで披露される、「龍踊り」がヒントとなった。神輿や山車型の物では、参加者が限られてしまうが、長い龍の体を大勢の人で支えながら舞うこの形態ならば、必要な分だけ胴体を延長して、相当数の人手で担ぐ事が出来る。また逆に、ものすごく長い胴体を制作する事を最初に設定してしまえば、必然的に多くの人を呼ばないと発表は成立しなくなり、活動の目標を設定しやすくなるだろうと考えた。幸い、空の芸術祭のテーマのブータン王国の国旗にも龍がいると言う事で、そのドゥルックという雷龍をモチーフに、大きな竜型の御神輿をつくり、期間最終日に会場を行進する事を目標に、WAKABADAI SKY DRAGON というプロジェクトを立ち上げた。

つづく

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自分で読んでいて感じますが、このレポート自体、出会った人との関係性とかではなく、自分から見たプロジェクトの進行の善し悪しを中心に綴っているので、なかなか最初の方はネガティブな文章が続きます。。プロジェクトが本格的に動き出すようになるまで、そんな雰囲気がずっと続きますが、もう少し我慢を…


2012年2月13日月曜日

「いちまいばなし」を読む!


今週の金曜17日に尾山台のギャラリーハウス、スペースSで、2回目のミニトークを開催します。
第1回目のトークは僕自身の自己紹介プレゼンだったけれど、
今回は今まで作ってきた『いちまいばなし』を『読む』ということを行いたい。



「いちまいばなし」浅草での実演の様子

「いちまいばなし」は、一枚の紙に絵を書きながら、
その場に出くわした全員で即興の物語を作ってゆくという活動で、
去年の5月頃から様々な地域で行ってきた。
一年近く行って来て、物語を『つくる』ということについては、様々な形でトライアルができたが、
次の段階として、出来上がった物語をどのように『読む』のかということを考えて行きたい。

毎回、複数の思惑が交錯した、奇妙なグルーヴ感の中で「いちまいばなし」の物語は生まれる。
その中で物語をただただ作ってゆくだけでなく、混沌の中で生まれる物語を、
どのように愛でてゆけばいいのかという視点も、同時に養ってゆく必要性を感じる。

確かに出会った人たちとその場で物語を作ってゆくのは本当に楽しい。
トンでもないものが他者から出て来た時に、どう受け入れていくのかという緊張感や、
発想のバトンを受け渡ししてゆく楽しさを、参加者が共有し始めた時の快感は何とも言えない。
また、毎回先導をやっている僕としては、他人の意識の海から物語を釣り上げていく様な興奮がある。

だが、この活動をもう1つ発展させるには、「つくる」ことの先にある、
「いちまいばなし」を「読む」とか「伝える」という事についての視点を充実させる必要がある。

個人の強靭な創造性によって作られた物語ではなく、
今さっき出会った人たちの頭を巡る事で作られた、他力本願の権化のようなこの物語は、
創造の現場の熱気から切り離されてしまうと、その効力の大半を失ってしまう。
そこで、今回のミニトークでは、そうやって現場から切り離された物語をどうやって楽しむのかと言う、
新たな視点を参加者と発見してゆきたい。

17日は年間を通じて出来た物語を、参加者で読み解き、読み合わせをして、
「いちまいばなし」にたくさんのツッコミを入れてゆこうと思う。
とりとめもない物語に、あーでもない、こーでもないと自由な解説をみんなでたくさんつけて、
物語を読む側からの創造をしてゆきたいと思う。

…と、ちょっと、固い感じになったけど
参加する人がいないとどうにも始まらないので、お時間あればぜひご参加を。。
諸事情により、今後は表に出ない様な「いちまいばなし」も公開しちゃうのでお楽しみに。

2012年2月12日日曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」その1




2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、1ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。



「WAKABADAI SKY DRAGON」

2012年2月11日土曜日

ブログを始めます。

過去の活動をまとめたものを定期的に乗せていくつもりです。
とりあえずは WAKABADAI SKY DRAGON の活動報告を連載してゆく事を基本に、
告知や日々の雑感を書いてゆきます。
どうぞよろしく。



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