2015年11月24日火曜日

「旅する家」完成式


茨城県の県北、常陸太田市で行っているプロジェクト、「旅する家」の完成式が行われました。



僕は1年ほど前から「ヒタチオオタアーティストインレジデンス」の企画で何度か現地を訪れていて、「いちまいばなし」をしていたのですが、そこで知り合った子育て支援グループ「くじらぐも」さんから「何か一緒に面白いことをしたい」という相談を受け、プロジェクトが始まりました。

話があった直後、地元の若い大工さんと知り合い、一緒に何かしようよということになったので、せっかく大工さんがいるなら、家を建てようということになり、「家」というモチーフが決まりました。



ただ、こういったプロジェクトでは、続けて行くうちに活動しているメンバーの発想が内側へのみに進んで行くことは好ましくなく、常に自分たちの外部へ目線を向けてゆくことが重要になってきます。

そこで、「家」という内向きな要素に対になるような、「旅」をもう一つのテーマにすることにしました。常陸太田は茨城県で最も広い市であることもあり、家が常陸太田のいろんなところへ出向いて、旅をしながら様々な行いをしてゆくというのが、最初のイメージとなりました。




そして、親子のメンバーと7月から会議とワークショップを月一度行いながら、どんな家にするのか、そこで何をするのかを話し合ってきました。







様々なアイデアが出た中から、何かを「祝う」家を作ろうというコンセプトが決まり、家の形については、「2階に上がりたい」「飾り付けをする」「衛星のような小さな家があある」などというイメージが出てきました。








僕の方からは、活動の中心になっている、鯨ヶ丘の商店街に多い町屋造りの形と、その都度飾り付けが変更できる骨組みを基本とした形を提案し、大まかな家の形が決まってきま
した。





最初のイベントが11月にあり、まずは家の完成を祝う「上棟式」をしようということが決まり、いろいろな飾り付けや、しきたりのことを大工さんにインタビューをしに行きました。






この上棟式(建前)は、建物を建てる際、無事に家が建つように神様へのお願いや、魔除け、大工さんへの挨拶、ご近所への振る舞いなどの意味がある行いですが、最近は行われることが少なくなってきているようで、僕自身も参加したことがありませんでした。

メンバーの中には、高いところからお金やお餅を撒く「餅まき」などに参加したことがある人がちらほらおり、その興奮や、楽しさを自分たちで作ってみたいという声が上がりました。






ここからは、家の装飾を考える「家班」と上棟式の必要物をつくる「建前」班に分かれ、式に向けての準備が始まりました。

これまでにあった行いを知り、それをどう解釈して自分たちなりの新たな行いにしてゆくのかを考え発信すること。そのプロセスを「表現」だと僕は捉えています。なので、今回も「上棟式」はあくまでモチーフで、それを知った上で旅する家の完成を祝う「完成式」を創造することが最終目的となりました。






今月に入り、大工の菊池さんの工場で、いよいよ家の製作が始まりました。






まずは材料を寸法に切り、ドリルで穴を開けてノミで削りながら接合部を作って行きま
す。






材料ができたら、組み合わせて固定して行きます。






菊池さんのところは代々大工さんをしていて、家族総出で家を作ってくださいました。






僕も3日ほど作業に参加させてもらい、だいぶノミ使いが上手くなりました。
菊池さんのお父さんから、細かい家の仕様や、上棟式の執り行いの詳細について話を伺えたのも、とても参考になりました。

また、自分で作業をしていると家に対する愛着もわいてきます。
今後は防腐剤を塗ったりするのをメンバーの親子と一緒にしたいなと考えています。






パーツが完成したら、1階と2階をクレーンで吊り上げて合体。
旅家自体にも車輪が付いていて、山車のように移動できますが、分割することでトラックに乗せた長距離移動ができるようになっています。






展示、収納用の小さな家も完成。






完成式当日を迎え、屋根の取り付けやメンバーが作った飾り物の取り付けを行って行きます。






メンバーが作った棟札。裏には参加者の名前が書かれています。






5色の吹き流しと破魔弓。
吹き流しの5色は古代中国の5行説に基づき、森羅万象を表すシンボルで、並ぶ順番が決まっています。

破魔弓には魔除けの意味合いがあり、災いがくるという鬼門(北東)の方向に向けられています。今回は2本作ったので、逆方向の裏鬼門にもつけました。縁起物の鶴亀、松竹梅が書かれています。

ちなみに、この飾り付けの様式は各地方で様々なバリエーションがあるそうです。






メンバーの製作物に触発されて、僕も久しぶりに筆をとり家の看板を作りました。
縁起物と、常陸太田の山、水、雲、太陽、そして市の鳥のカワセミと山吹をあしらいました。また、英名は HITACHIOTA'S HOUSE ON WHEELSになりました。






1階の壁も5色で飾り、旅する家が完成しました。
方角はバッチリ南向きです。






小さな家には、これまで作った模型や、お供え物を展示しました。






女の七つ道具






場を清める酒や塩、縁起物、旬のものの供物。
鯛は予算の都合上、手作りになりました。






これまでの模型なども展示。








会場は、「ココイクメッセ」という子育て関連のイベントになっているので、完成式までの間は、小さな家の外壁をお菓子の箱で装飾するワークショップを行いました。






お昼タイム。
家の内側なのか、外側なのか、不思議な場所でご飯を食べます。






訳もなく楽しい午後。






完成式が近づいてきて、2階に上がって準備。






大工の菊池さんの「本物の家と同じ出来栄え」の言葉通り、頑丈な作りになっています。




時刻は14時となり、完成式とお菓子を撒く「かしまき」が始まります。




声をかけるとたくさんの見物人が集まってきました。
ほとんどの人が袋を持ってきているのが面白かったです。






まずは、これまでの経緯と、上棟式のしきたりにちなんだ完成の儀を行い、いよいよかしまきが始まります。






参加は年齢で分けて行いましたが、なかなかの盛況ぶりでした。以前参加したことがある人からは、大人と一緒にするとえらいことになるという話だったので、今回は小学生以下限定にしましたが、目の色が変わった大人と撒きものを取り合うことで、いろいろな社会勉強になったという意見もありました。






中に舞うお菓子。その状況だけでもテンションが上がる気がします。






約500個のお菓子を巻き終わり、なんだか満足げなかしまき隊。
完成を祝うために、福を分ける「かしまき」でしたが、お菓子を受け取った人たちよりも、撒いていた人たちの方がより深く大きな喜びを得ているように見えたことが非常に印象的でした。






イベントも無事終了し、記念撮影。
今回は2階に上がれなかった子たちも大きくなってまた上がれるといいですね。






今回のプロジェクトは「くじらぐも」という小さな集団が、自分たちの生活を豊かにするために、外部のアーティストや地元の協力者を巻き込んで、プロジェクトを推進して行った事に僕は大きな関心を持っています。プロジェクトの中には、「誰のために行っているのか?」がよく見えないものも多々ありますが、「自分を豊かにするため」と明確な目的を実感できるのが、このような小さなプロジェクトの強みなんだと思います。

今後も「旅する家」は常陸太田を中心に、これまでそこにあった、もしくは今もなおある日常の行いをベースに、参加者の生活を自分たちの手で豊かにするための表現を行って行きます。

半年かけて行ってきたプロジェクトがここでやっとひと段落しましたが、ここからが始まりです。来月からも月に一度の活動を通して、来年どのように旅家を稼働させて行くかを考えて行きます。メンバーになりたい方は是非ご一報ください。


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