2013年11月26日火曜日

カウンセリングと「いちまいばなし」その2

さて、前回に引き続き
カウンセリングの学校で行った「いちまいばなし」についてのお話です。
今回は物語を作るその裏側に、参加者のどんな心のやりとりがあったのかを
聞いていったインタビューの模様をお伝えします。
今回は割と玄人向けの内容かもしれません。
まだ「いちまいばなし」あんまり知らないよ。。という方は
以下のページを見てもらうと良いかもです。





*(注)写真はイメージです。
まずは物語のおさらい。こんな話が出来ました。




「みんなの夢」
2013年11月23日

公園でクリスマスが行われていました。
公園には噴水と、切られてしまって半分になった大きな木がありました。
その木から、別の木にイルミネーションが飾られていました。
公園にはお母さんと子どもがいました。
そこにプレゼントが大、中、小とありました。
意外と小のプレゼントが良さそうで、
開けてみるとゲームが入っていました。
それは今まで誰も見た事もやった事も無いゲームで、
切られた木から、噴水まで飛べるかというゲームでした。
プレゼントの送り主は解りませんでした。
もう少し人が来てほしいなと思って、
ラジカセでクリスマスソングを流すと、
人が30人程集まってきて、
みんなで木から噴水に飛ぶゲームをやって、とても盛り上がりました。
ゲームで1等になった人が大きなプレゼント、
2等になった人が中くらいのプレゼントをもらいました。
2等の中くらいのプレゼントは、箱にいっぱい入った宝くじでした。
1等の大きいプレゼントはハワイ旅行で、その場にいた全員分チケットがあったので、
みんなバラバラでハワイへ行きました。
そして、これは全て最初にいた親子の子どもの見た夢でした。


この「いちまいばなし」は11人の参加者を2周して作られました。
ここから便宜上、それぞれの参加者を1さん〜11さんと名付けます。
また、それぞれの発話について、
司会の問いかけ問いかけに対する参加者の発言発言の動機やイメージ
という3色で表してゆきたいと思います。

まず、いつもの様に物語のお題、最初に登場する物を募集しました。
毎回ここで沈黙が起こる事が多いのですが、
さほど間が開く事なく、オチ担当11さんから「クリスマス」というお題が出ました。
こういった季節物がお題に出てくる事は「いちまいばなし」でままあるのですが、
聞いてみると11さんは、
最近フィンランドに行ってたっぷりクリスマス気分を味わってきたので
このワードが出て来たそうです。季節物と思いきや、実体験からの引用だったようです。

さて、ここからが物語づくりの本番。
司会の僕は「『クリスマス』から始まる『いちまいばなし』始まり、始まり〜」といって
拍子木を打ち、1さんから順番に物語の展開を参加者に問いかけてゆきます。

「クリスマス」というイベント系のワードが出て来たので、
僕はまず「どこで行われているクリスマス?」という場所について1さんに問いかけました。
そこで1さんからは「公園で」という回答。
その後のインタビューで1さんは
「人が集まりそうな場所を想像した。公園か広場で迷った。と言っていました。
「クリスマス」というイメージを素直に受けた想像が働いています。

「公園」という場所がでてきたので、
「どんな公園?何かある公園?」と、もう少し状況を明確にする質問を2さんにしました。
2さんからは「噴水がある公園」という回答。
「公園と言ったら噴水かな?というイメージだった。」という、
ここでも前の人のイメージをそのまま受ける形のリレーが続きます。

もう少し公園の様子を見てみたかったので、
「他に何かありますか?」と聞いてみると、
3さんから「木があります」との回答。
「形を絵に描きたいのですが、どんな木ですかね?」とさらに3さんにつっこむと、
「真ん中くらいで切られてしまった木」という何とも不可解な木が出てきました。
どういうイメージだったのか聞いてみると、
「木のイメージが湧いてこなかったので、切ってしまえば何の木か解りやすくなる
(いろんな木の可能性がある)と考えたから」とのこと。
何の木か解りやすくするために、逆に木を切ってしまうというのが面白いですね。
今まであまり無いパターンの発想法です。

さて、少し変な物が登場して来たので、
僕はこの辺りで話がおかしな方向に動いてくるのかな?と予想し始めました。
さらにこの公園の様子が知りたくなったので、
「他に何かありますかね?」と4さんに聞いてみると、
「イルミネーションが木の間にかかっています」との回答が。
「クリスマスと言ったらイルミネーションというイメージだった」という事で、
へんてこな木はスルーされ、前提であるクリスマスの状況に立ち返る流れになってきます。

「クリスマス」「公園」「噴水」「切られた木」「イルミネーション」
とだいたい情景が整って来たので、ここで物語の登場人物を出したいと思い、
「この公園には誰かいるんですか?」と5さんに聞いていると、
「お母さんと子どもがいます。」とのこと。
5さんによると、「誰か1人だと寂しい、でもアベックではないと思ったから。」だそう。
ここでも、「イルミネーション」同様
「母と子」というクリスマスのイメージをより強固にするようなワードが続き、
3さんの出した「切られた木」の違和感が完全に払拭された感がありました。

さて、登場人物は出てきましたが、クリスマスというにはちょっとにぎやかさに欠ける状況。
その辺を6さんに投げかけてみました。
「ちょっと寂しげなクリスマスですが、こんな感じで大丈夫でしょうか?」
そこで6さんは「プレゼントがある。大、中、小。」と返してくれました。
「クリスマスと言ったらプレゼント。
開けた楽しみや、期待を持たせるために3種類にしてみた」とのこと。
切り株に続き、思わせぶりなアイテムが再び登場してきます。

また物語が動きそうなアイテムが出て来たので、
ここはこのプレゼントに流れをフォーカスさせて行きました。
「この3種類というのには、何か意図があるんでしょうか?」と7さんに聞いてみると、
「小さい物に良い物が入っている。」との回答。
「昔話を思い出し、小さい物程良いイメージがした。」とのこと。
差異のある贈り物から、「舌切り雀」とかを想像したのでしょうか?

7さんの回答をふまえ、
3つ中でもさらに一番小さいプレゼントに物語をフォーカスさせて行きます。
「では、その小さいプレゼントには何が入っていたのでしょうか?」と8さんに聞いてみると、
ここで8さん少し長考の末「ゲームが入っていた。」と回答。
その悩んだ部分も含めて聞いてみると、
「何か面白い事を言った方が良いのかな?と思って考え込んでしまった。
最終的には、親子だったのでゲームかなとイメージした。」ということそう。
そうなんです。この「おもしろい事言わないと!」という、
欲求、焦燥、羞恥心、等々が参加者を悩ませる根源であります。
「ぜひ面白い話を作って下さいね!」と僕が言わずとも、
自然にこの状況に陥ってしまうのが、人間の業深きところであり、
また「いちまいばなし」が面白くなるエッセンスでもあります。

さて、その悩みの中で生まれたアンサーにさらに迫って行きます。
9さんに「それはどんなゲームだったんですか?」と聞いてみると、
「今まで、誰も見た事もやった事も無いゲーム」というかなり抽象的な回答が。
ちょっと想像しにくいものへの言及が回って来た場合、あえて具体的な回答をせずに、
こういった抽象表現や形容詞で乗り切るという、
「いちまいばなし」の受け流しテクニックがあるのですが、はたして9さんの意図は、
「ゲームをしないので、イメージが浮かんでこなかった。
みんなで新たな発想をより広げられる様に、『誰も見た事の無い』と言った」とのこと。
なるほど参加者の発想を広げるための抽象化作戦だったようなんですが、
逆にこれは10さんの回答のハードルを上げてしまったようです。

そのまま10さんに「誰も見た事の無いゲームって、何ですかね?」と聞いてみると、
少し考えて、「切られた木から、噴水にジャンプするゲーム」という衝撃の回答が。
会場からは大きな笑い声が噴出します。
8さんからの流れでイメージできるWiiとかDSとかゲーム機器、
もしくはボードゲーム、カードゲーム等の予想を大きく飛び越え、
謎の遊びがここで誕生しました。
10さん曰く「8さんのゲームが出て来た時点で、何のゲーム?と聞かれたらUNOと
答えようと思っていたけれど、『今までに無い』ということだったので、
ふと絵を見たら、切り株みたいな木があったので、飛んだほうがいいのかな?と思って。」
とのこと。
「切り株があったら飛んだ方が良い」というのは10さん独特の考え方な気がしますが、
ある意味、予想と違うものがいきなり来た「焦り」や、
もうなんでもいいやという「あきらめ」がこの面白い回答を生んだのだと思います。
ここで、この物語で初めて「普段だったら絶対たどり着かないイメージ」が出てきましたが、
こういった新たな発想を生み出すためには、
「面白い事を考えよう!」「新しい事を発想しよう!」という前向きで健全な気持ちだけでは
なかなかうまく行かない事もあり、どちらかというと、
上記の「焦燥感」や「あきらめ」の様な要素が重要なのではないかと思います。

ともかく、ここで物語は今日一番の盛り上がりを迎えました。
ここであえて角度を変え、11さんには
「そもそもこのプレゼントは誰からの物だったんですか?」と聞いてみました。
僕としては、10さんの珍回答で、場が暖まって発想の箍(たが)も
少し緩んで来たかなと予想して、ここで送り主についても変な回答が出てくれば、
親子との関係性について面白く膨らませられるかな?という思惑が会ったのですが、
11さんからは「それは解らなかった。」とかわされてしまいました。
意図としては、
「サンタさんと言うとあまりにベタ。かといってお母さん、お父さんという
実在の人物にしてしまうより、クリスマスのファンタジックなイメージを壊さないよう
あえて誰か明らかにしない方が良いと思った。」という事でした。
3さんの「切られた木」、9さんの「誰も見た事の無い」に続く、
他の人のイメージのふくらみを阻害しないよう、配慮した発想法ですね。
やはりこの辺りは、他者の心に真摯に向き合おうとする
カウンセラーの気質がでているような気がします。


さて、ここでやっと参加者全員を一周して折り返し。
参加者皆さんがある程度の面識があるという事と、
「クリスマス」という多幸感のあるワード始まりということで、
序盤からかなり安定した流れで始まりました。
中盤で謎の遊びが出て来た事と、1周目を終えた事で、
2周目はもう少しざっくばらんな物語になってきます。
いざ書きお起こしてみると長編になって来たので、今回はここまで!

次回の更新で完結編です!
佐藤悠web


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