2012年3月24日土曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その7





2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。

参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<その7>

その頃は、芸術祭の会期も近づいた頃で、ワークショップを行う状況にも変化が出て来た。今までは拠点を持てずに西中で平日は活動していたが、商店街の空き店舗を借り『SKY ROOM』というワークショップ専用のスペースを団地の中心街に確保する事ができた。それによって平日の作業もそこで行えるようになり、買い物帰りのお客さんや、下校途中の小学生等、格段に活動が人目につく様になった。その結果、一度に大量に子供が集まる様になり、最初は統率にとても手を焼いた。平日は早くて15時には下校した子たちがやってくる。ワークショップの時間は18時頃までなので、正味2、3時間だが、短時間に集中するので、毎日が嵐のようだった。毎日15時を目指して、材料の買い出しや寸法出し、または子供では出来ない作業をこなしておくのだが、なかなかはかどらない事もあり、そんな日は下校してくる子供たちの声に恐怖を感じた物だった。



SKY ROOM




また、僕の中でワークショップを行う「場」を作るという意識が生まれ出したのも、この「SKY ROOM」での活動からだった。ワークショップの「場」を作ると言う事は、そこへ立ち入るとワークショップに関わらざるを得ない場を演出すると言う事である。なのでまず第一に行うべき事は、ワークショップに関係するもの以外の排除である。

この考えに至るまでに時間がかかり、初期の頃は子供たちが現場に持ってくるおもちゃに大変苦労した。西中では誰かの手からカードゲームが出てくるともう駄目だった。子供たちは一瞬で興味を奪われ、進行はかなり手こづった。僕のスタンスとしては、ワークショップはやりたいと思った人が参加する物であり、その場に立ち入ったから強制的にやらされる物ではないと考えていた。参加しなくてもいいし、自由に休憩してもいい。なのでワークショップに飽きた子がカードゲームをする事自体は特に問題はないのだが、それがワークショップと同じ場で行われると、現在進行形で作業に集中している子の興味まで奪ってしまう。そこが問題だった。よって、現場が『SKY ROOM』に移ってからは、「遊んでもいいが、遊ぶのはSKY ROOMの外」「 SKY ROOM ではワークショップに関係ある事以外を行わない」というルールを決めて進行した。

ワークショップは何かを享受する授業ではなく、参加者が主体的に参加していかなければ意味が無いので、単に今参加していないからと言って一方的にその子を避難したり、排除したりしても仕方が無い。一人一人にリズムや事情があり、そこに介入してまで参加を促す事は愚行である。いったん外で遊んで来てまた初めてもいいし、どうしてもやる気が起きないなら、今日はお休みしたっていい。

参加者自体のモチベーションに期待するよりも、本人が能動的に活動に関わりたいと思えるような場を作って行く事が重要である。だが、子供達の目は鋭く、水が低きに流れてゆく様に、場の中に緊張感が薄れている部分や、関係のない物が置いてあるようなところをすぐ見つけてそこで遊び始めてしまう。ある時、最終発表の行進用に保管してあった楽器類が発見されたときは、楽器を持った子供がハーメルンよろしく、全ての子供を音楽のトリコにしてしまい、全く作業にならなかった。常に現場には、この場がワークショプをする場所以外の何ものでもないという緊張感が必要であり、それ以外の具材は全て排除してゆくと言う、場の純化が必要である。

つづく

0 件のコメント:

コメントを投稿

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
「いちまいばなし」 by 佐藤悠 is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 - 継承 2.1 日本 License.