2012年2月24日金曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その4


2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。

参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

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<前回までのあらすじ>
「WAKABADAI SKY DRAGON」の制作を始めた私の元に、子供たちがだんだんと集まり、プロジェクトに関係する人たちが増えていった…


<意外に苦戦したドラゴンのウロコ。広範になるにつれ、そのデザインはだんだん簡素化されてゆく>

<その4>
動き出したプロジェクトの最初の訪問者である彼等はその日、試作品のドラゴンをひとしきり振り回して遊び、「また明日も友達を連れてくる」と言い残して帰って行った。そして本当に次の日は友達がやって来た。同学年である3年生の友達と、さらに彼等の6年生の兄とその友達5~6人がやって来た。だんだんとワークショップが行える対象は集まって来たのだが、僕の方はまだまだ準備不足で、彼等と何かを進められる状況ではなかった。
とりあえず、週末に予定している最初の公開ワークショップに向けて、彼等に準備をしてもらおうと簡単な工作の作業を頼んでみた。ドラゴンのウロコの形をビニールシートに型紙で転写し、線の通りにハサミで切る。子供でもできる簡単な作業だ。と、僕は思っていた。しかしそこで僕は初めて、子供の持つ集中力、作業力というものに直面した。

まず、ハサミでの作業を苦もなく出来る子は子供では中々いない。いや、ハサミを上手く使える子はいくらでもいるだろう。しかし、それは自分の作りたい物を作るときであって、大人の様にこなさなければならない作業を、淡々と苦もなく繰り返してゆけるようなハサミの使い手はなかなかいない。また、彼等の集中力は1時間、いや30分持てば良い方で、同じ作業を5分もすればだいたいの子は別の事をやりたがった。
それまで僕は、子供たちが持つ作業量を、大人のそれとと同じ地平で考えていた。作業内容を小学校高学年なら大人の5分の1、低学年なら10分の1などと、それぞれ単純にスケールダウンさせれば、子供たちでも進められるだろうと考えていたが、それは全く見当違いだった。つまらない作業は遠慮なくはじかれる。目の前にある事をやるかどうかは、それが魅力的かどうか、それだけだ。まだ着地点も概要も見えない僕のワークショップは、彼等にとってまだまだつまらない物だったと思う。大人の様にその場に立ち会ってしまった義理だけで作業を続けてもらえる程、子供の世界は甘くない。一度席に着いても、いつでも作業を放棄する事ができる。作業に人をもてなすような魅力がないと立ち行かない言う事を、素直な彼等は教えてくれた。




<少し簡略化されたドラゴンのウロコ。>


そんな日が1週間程続き、やがて第一回公開ワークショップの日がやって来た。この頃はまだ、若葉台の中心街で空の芸術祭のために常時解放しているスペースは無く、我々作家は、平日は西中で活動を行い、週末の土日に団地中央に位置する広場で、公開ワークショップを仮設テントを建てて行うという形をとっていた。8月から、既に活動していた作家のワークショップが大きく展開しており、僕はそのテントの隅でドラゴン作りのワークショップを開催した。試作品を作ってみてドラゴンが子供には大きすぎる事が分かったので、サイズを一回り小さくしたドラゴンの完成を目標に、平日は西中で胴体と頭を作り、土日の公開ワークショップでウロコの切り貼りをして完成させようという算段だったが、前述した様に、ハサミを使った作業や、型紙でウロコの形をトレースする作業は子供にはまだ退屈で、結局他の作家のスタッフの力を借りて、必要なウロコをこしらえることになった。

続く

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