2012年2月21日火曜日

「WAKABADAI SKY DRAGON 100mの向こう」 その3


2011年9月23日~10月2日、横浜若葉台団地で「空の芸術祭」という、「空」と「ブータン王国」をテーマにしたアートプロジェクトが開催された。総合プロデューサーは日比野克彦。7人の日本人作家とブータンの作家1人を迎え、17000人が生活する若葉台の中で様々なプロジェクトが行われた。会期中にはブータン王国のティンレー首相も若葉台を訪れ、大きな盛り上がりを見せた。
作家の1人として芸術祭に参加した私は、ブータンの国旗に登場する龍をモチーフに、100mの長さのDRAGONを作り、街を行進する「WAKABADAI SKY DRAGON」というプロジェクトを行った。以下の文章は、約2ヶ月の滞在制作を記すために綴る、不定期連載の活動記録である。

参考動画はブログの右手の動画コーナーにあります。

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<前回までのあらすじ>
芸術祭開催1ヶ月前、再び若葉台に入った私は、空の芸術祭でのプロジェクトとして、「WAKABADAI SKY DRAGON」を立ち上げた。


<その3>
おおまかな構想はあったのだが、そのころはプロジェクトの具体的な着地点はまだ見えないまま、まず始めに、小さな制作物から活動を始め、仲間を集めたいと思い、1人が持って振り回して遊ぶような小さなドラゴンを作り始めた。鯉のぼりのような筒状の胴体を持ったドラゴンに、虫取り網のような構造のフレームをつけ、棒を振り回すと胴体に空気が入り、龍が舞っている様に見えると言う代物だ。制作を初めて2、3日たち、試作品が出来始めた頃、僕のところに初めて訪問者が現れた。その頃制作場所として使っていた前述した西中の立地は、団地の中心街からは大きく外れており、なかなかふらりと人が訪れる場所ではなく、基本的には孤独な作業が続いていた。そんなさなか、突然2人の小学生がやって来た。彼等は、他の作家のワークショップを目的に西中を訪れ、ついでにこちらのスペースにも来てくれたようだった。


全長3m程の小ドラゴン

「なんだこれ!かっこいい!」第一声はそんな感じだったと思う。小学3年生という2人は、試作品として作っていたドラゴンを一目見てかなり引き込まれたようだった。最初に出会った彼等は、今思うと、直感的にプロジェクトの面白さや可能性を嗅ぎ取ったのではないかと思う。その後もいろんな子供たちと出会ったが、プロジェクトへの参加の仕方はいろいろで、友達がそこに集まるから来る様になったり、自分と遊んでくれる大人がいるから来たりと、だいたいは場の居心地の良さからワークショップスペースに入り浸り、その後制作を続ける中で、出来てゆくものや関係性に重要性がシフトしてゆくような、場から物へ興味が移ってゆく事が多く見受けられた。だが、まだ場が何も出来ていなかったその時、純粋にドラゴンを見て、こちらへ入って来てくれた彼等はかなり特異な存在だと後々になって気付いた。


試作品4.5mの大ドラゴン(左)と4mの中ドラゴン(右)

さっそく前日に出来たばかりの、試作品のドラゴンを彼等に披露する。白いドラゴンが空を舞う姿を見て、彼等は興奮し、自分たちもやってみたいと言い出した。図らずも、最初に出来たその試作品のドラゴンは子供が持って遊ぶにはかなり大きく重く、発泡スチロール製の頭部は、彼等が遊ぶ度に地面にぶつけられて何度も壊れた。自分たちではどうしても上手く扱う事ができないので、ドラゴンは一周して僕の手元に帰って来た。そこで、ここぞとばかりに再びドラゴンを舞わせると彼等は感嘆し、僕は「ドラゴンを上手く扱えるもの」として少し尊敬される様になった。その後も彼等といっしょにワークショップを行ってゆく事になるのだが、その中でも彼らが扱いづらい道具を使いこなしたり、絵をうまくかけたりといろいろな場面で、まだ自分の体を上手く扱えない子供と、物を扱う事に慣れた大人の境を彼等なりに強く感じたのだと思う。いつからか僕は彼等から「師匠」と呼ばれる様になった。この呼び方は、その後集まって来た子供たちにも広まり、会期が始まる頃には、その親御さんたちからも師匠と呼ばれる様になっていた。おそらくこの呼び方の背後には、先生でもなく友達でもない僕と彼等の関係性のなかで、僕を呼ぶ為の何か新たなポジション名が必要だったからだと思う。佐藤さんと名字で呼ぶにはよそよそしい感じがするし、下の名前だと馴れ馴れしすぎる。少しの尊敬と気恥ずかしさを込めて、「師匠」という名が生まれたのだろう。後にこの通名は、ワークショップの進行において意外な効果をもたらす事となる。

つづく

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